今年の春、盛岡市に初めて誕生した道の駅「たみっと」。
オープン前からずっと気になっていた。というのも、ここから眺める岩手山は、春分や秋分の頃に夕日がちょうど山頂に重なり、「ダイヤモンド岩手山」になるんじゃないか――そんな妄想を膨らませていたからだ。
いいかげんZ7を手放そうと思っていたけれど
春分の日にはまだ工事中で施設内に入れず、構図の確認もできなかった。だからこそ、秋分が近づいた今がチャンス。機材を整理して軽量化したカメラバッグを車に放り込み、「たみっと」へ向かう。
日没は17時ごろ。でも太陽が山頂にかかるのは、たぶん30分ほど早い。そう踏んで、16時には現地に到着。
太陽はまだ岩手山の稜線に届いていない。
風景写真は、やっぱり高画素機のZ7の出番。最近は動画ばかりで、Zfが主力になっていたから、Z7を持ち出すのも、静止画を撮るのも本当に久しぶりだ。
もちろんZ7でも4K動画は撮れる。でも今ハマっているのは10bitの「N-Log」撮影と編集。
写真でいうRAW撮影のようなもの…と説明したいところだけど、このあたりは少しややこしい話になる。
撮るという行為そのものが楽しい
構図探しとレンズテストを兼ねて、撮影開始。
(レンズのテスト結果は次の記事でまとめるた)
動画はある程度の構図でサクッと回す。でも写真は違う。構図を探し、光を追い込み、レンズを替えてはまた覗き込む。
たいした景色じゃなくても「もう一枚、もう一枚」と微調整を重ねてシャッターを切っていく。
その過程が、実に楽しい。
太陽が山頂にかかるまでのわずかな時間、夢中になって過ごしていた。
ふと視界に入ったのは、背の高い植物の天辺に留まるトンボ。逆光でシルエットになったその姿を、夕日と一緒に切り取る。
太陽光が眩しくて、ファインダーを覗いたままプレビューで確認。いい感じでトンボが写っている。
ピントが合っているか、トンボの部分を拡大してみると――眉間から伸びる触覚、胴体を覆う細かな毛、羽根の葉脈のようなディテール。そんな繊細な部分までしっかり写っていた。
思わず「写真撮りてー」という感情が湧き出ていた。いや、今まさに撮っているのだけれど。
そして、Z7が高画素機だったことを思い出す。
「思い出す」というのも変な話だが、最近は動画漬けで「4K=手持ち機材の最高画質」みたいな感覚になっていたから「Z7もZfも一緒」と考えていた。
ちなみにこの時のレンズは Z 24-120mm f/4 S を使った。
そして、ダイヤモンド岩手山の時間
気づけば本命の時間。
太陽がゆっくりと岩手山の稜線に重なっていく。ファインダーを覗きながら、静かに数枚シャッターを切る。
イメージは山頂に太陽が沈んでくれれば成功だったが少し時期が遅かったようだ。あと1週間程度早く思い出せば丁度良かったかもしれないから来年の秋は、いや来春は時期を修正して再挑戦だ。
でも、久々に夢中になれる時間だった。ファインダーの中が、自分だけの空間になる感覚――それを久しぶりに味わえた。
正直、Z7はもうトレードしてもいいかと思っていた。1世代前の映像エンジンだし、瞳AFも動物AFもない。連写もすぐに詰まる。
でも、この日あらためて思った。「まだまだ現役だ」と。いや、むしろ「俺はまだやれるぞ」と言っているような気がした。
ということで――
高額設定が予想されるZ7Ⅲを待つのはやめて、ZRをポチる算段にかじを切ることにしたのだった。
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