落ち着きのない「キュキュキュ、キュキュキュ」という聞き覚えのある鳴き声に、心は自然と反応し空を見上げた。
曇り空にはV字編隊で南に向かうマガンの一群。
10月に入っても日中はまだ夏日が続いている盛岡だが「せっかち」な冬鳥たちの訪れに、暑くてばてやしないかと余計な心配をしてしまう。
“自分にとっての最適”を見極めるという選択
突然のマガンの訪れはさておき、Nikon Z50Ⅱ、Z5Ⅱ、Zfシルバー、そして Z CINEMA ZRと、最新のカメラが次々と発表される今日この頃。
昨年発売されたばかりのZ6Ⅲでさえも、なんだか古くなった錯覚さえ覚える。
写真を撮らない時期も長かった。それでも新機種が発表されるたびに手持ち機材のトレード戦略をその都度くわだてる訳だが、最近になって写欲が高まり、旧式の「Z7」でも十分楽しいし感動もする。むしろZ7の性能を持て余している感さえある。
世間ではすっかり”旧式”のレッテルを貼られてる「Z7」。
AF性能や動画性能を見れば、エントリー機でさえ最新機種に軍配が上がるのは事実。
しかし、私は少し前まで替え時を模索していたこの「Z7」を手放すことをやめた。
それどころか、以前にも増して「最高の相棒だ」と感じてる。
なぜ、私は型落ちの「Z7」を使い続ける事を決めたのか。今回は、私がこのカメラを手放せない「4つの理由」について、正直な気持ちをまとめてみようと思う。
理由1:ベース感度ISO64が描き出す空気感
正直に言うと、私は長年「画質を求めるならISO100」という、いわゆる”ISO100信者”の生き残りでした。しかし、最近になって写欲が再燃し「Z7」を風景撮影で使い込むうちに、その固定観念は完全に覆され、無知と勉強不足を痛感した。
「Z7」のベース感度である**「ISO64」**。今まで気づかなかった、このわずかな差が生み出す世界は、一皮むけたような空気感を表現してくれるように感じている。
現像時も心持ではあるが自由度が高いような気がしている。
もし興味があれば下記のブログから、私の無知を笑ってほしい。

「Z7」は色ノリが少々悪いような気がしていた。高画素だから物理的にしょうがないと思っていたが実は全くそんな事は無かった。単純に無知と勉強不足だった。であれば、高画素機であるデメリット(そもそもデメリットではない)は一つ無くなった。
理由2:4575万画素の解像感が与えてくれる「後からの自由」
Z7の一番の特徴である4575万画素という高画素故の緻密な画とトリミング耐性。
1億画素のカメラがある現在ではどうかと思うが、それでも一昔前のPCでは一枚の写真を表示するにも時間がかかり、ましてやRAWデータを現像しようとしてもPCが固まってしまう程のデータ容量だ。
この画素数で得られる物は**「クロップ(切り取り)しても画質が落ちにくい」という「安心感」と「自由」**を意味する。
撮影時に完璧な構図を追い込めなくても、あるいは手持ちの望遠レンズが短くても、後から大胆にトリミングして作品に仕上げられる。広角で撮っておいた一枚から、望遠で切り取ったかのような迫力ある一枚を生み出すことも可能だ。
この”クロップ耐性”の高さが、撮影の自由度を劇的に上げてくれる。
自由度を上げている理由として、もう一つ付け加えたいのがレンズを少なくできるという事。
最近ではNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sをつけっぱなしにしているが、これがZ7の高画素機と相性が良い。
というのも、おおよそ120mmもあれば遠くの一部分を切り取りたい場面であっても、とりあえずその部分が入るように撮影し、帰ってからLigtroomで300mmクラスの望遠レンズで撮ったような切り取り方(トリミング)をしてもPCで見る前提ではあるが、ぜんぜん使える写真になる。
意外とこのやり方にはまっていて帰ってからトリミングする作業が宝探しのようでとても楽しい。
ちなみにサムネの写真はこの写真から切り取ったものを使ってみた。
サムネの写真は横幅でここから60%ぐらいにトリミングしているが、それでもZfの書き出しサイズから一回り小さい程度だ。
因みに
クロップ前:8256×5504ピクセル
クロップ後:5109×2874ピクセル(16:9)サムネ
Nikon Zf :6048×4032ピクセル
そして、最近になってDXクロップの癖も分かったので、今では自信を持ってDXクロップする事は無い。
前回のブログではその辺と高画素のメリットについて少し深ぼりしてカメラテストしてみたので、そちらも覗いてみてください。

つまりは、明確に望遠レンズが必要でなければ、望遠クラスのレンズを持ち歩かなくてもなんとかなるので、撮影地ではフットワークが軽く楽しく撮影できている。
理由3:弱点を知ることで見えた「最高の専門家」という役割
もちろん、Z7が万能だと言うつもりはない。一世代前のというか、Nikon渾身のZマウントミラーレスカメラ初号機です。
- 動画は4Kでも8bit収録のみ
- AF性能は最新エントリー機種にも及ばず、特に動体追従は苦手
- 高速連写も得意ではない
- ダブルスロットではない
その他デメリットはいろいろ出ては来る。
しかし、私の撮影フィールドはドライブ先の風景や静物がメイン。
これらの弱点は、私にとって「問題にならない」のです。
動画は8bitだけどスマホとは比べ物にならない画質だし、はなからAFは信用してないしどうせガッツリ絞るし、白鳥撮るときも基本置きピンだし。メモリーカードも1枚で困った事ないし、機械トラブルになった事もない。信用あるメモリーカードを購入するだけでなんの問題もない。
…なんだか強がりに聞こえてくる。
いやむしろ、弱点がはっきりしているからこそ、「Z7は風景を撮るための最高の専門家だ」という確信を持ち始めている。
これは、Nikon Zf がサブ機(メイン?)があるから割り切れることかもしれない。
こちらのAFは次元が違った。動画はN-Log 10bit撮影も内部録画でできてしまうし、いつかは使ってやろうと思っているプリキャプチャーもついている。
ただ、高画素ではないから風景で使うには現地でキッチリ構図を決めなけれなばらないから注意が必要だ。
理由4:買取価格7万円。安すぎるから、もう愛用するしかない?
そして、これが最後の、そして最も現実的な理由です。いいかえれば負け惜しみかもしれない。
先日、某カメラサイトでZ7の買取価格を調べてみたところ、**衝撃の「7万円」**でした(2025/10)。
中古のiPhone13Proぐらいしか買えない…。
私はたった7万円でこのカメラがもたらす感動を手放すのか?
答えは明確に「NO」だ。私にとって、Z7が描き出す画質は、7万円という金額とは比較にならないほどの価値がある。
これだけの画質を持つZ7が、今や中古市場で13万円台から手に入ることに驚いた。Z7を知る私の価値観では”異常”なほどのコストパフォーマンスだ。万が一落として壊れても15万円も出せばまた手に入る。
最新の高性能カメラが50万円以上する時代に、その1/3以下の価格で、今なおトップクラスの緻密な画質を味わえるのだから破格以外の何者でもない。
これから風景写真を本気で始めたい人にとって、これほどコスパのいい本格カメラがあるだろうか。今、手元にZ7が無ければ迷わず買って試して頂きたい。
私はもはや、手放す理由が見つからない。ならば、このカメラでドライブした先々の風景をたくさん切り取り、これからも最高の相棒として楽しく使い続けよう。そう心に決めたのです。
まとめ:Z7は、私にとって最高の「風景写真機」だった
Nikon Z7は、確かに旧式のカメラだ。しかし、その心臓部には「ISO64」と「4575万画素」のローパスフィルターレスという、いまもなお色褪せない基礎体力が宿っている。
私にとってZ7は、ただの古い機種ではない。息を呑むような風景の細部まで写し取る、その描写力こそが私を魅了し続けてきた。
癖を知り長所を探す作業もカメラ好きとしてはとても面白い。
新しいモデルが次々に登場しても、私にはこれで充分。とてもZ7を手放す気にはなれない。
撮りたいものをまっすぐに写し撮ってくれる、このカメラこそが私にとってはかけがえのない。そして信頼できる相棒だと、今更だが気づいたような気がする。
そして最後に、おまけの理由としてぜひ言いたい事がある。
それは、この高画素機でありながら小さいボディーにグリップが超絶握りやすく操作性が抜群なので、つい第一関節の指3本ぐらいに引っ掛けて持ち歩くのが癖になっている。
最後の一行が一番の理由かもしれない…。
コメント