2018年の秋、Nikon初のフルサイズミラーレスZ7の登場を機に機材を乗り換え、私のZマウントへの移行が始まりました。
「新しいZレンズは、まだ出ないものか…」
最初の頃は、なかなか揃わぬレンズラインナップにやきもきしながらも、一本一本をじっくりと吟味しては、長年連れ添ったFマウントレンズと入れ替える日々。途中で写真への情熱が減退した時期もありましたが、今思えばその時間のおかげで自身の撮影スタイルが確立され、衝動的に機材を買い増すこともなく、賢明にZマウント化を進められたと自負しております。
そんな私が、どうしても手放せずにいるFマウントレンズが、ただ一本だけあるのです。
今回は、Zマウントが盛り上がりを見せ始めてきた今だからこそ語りたい、私にとって「神レンズ」と呼ぶにふさわしい、唯一無二の一本を紹介させてください。
太陽光条ウニウニの名玉
サブタイトルで、最近の若い方々が使う「ウニウニ」という面白い表現を、あえて拝借してみました。まさしく、このレンズで捉える太陽の光条(光の筋)は、針のようにシャープで、えもいわれぬ美しさを描き出してくれるのです。
ブログ投稿200回記念。これは、私がカメラを始めた頃の自分に教えてやりたかった、長年の経験から得た、とっておきの話です。
そのレンズとは、すなわち、これ。
手ブレ補正(VR)を持たない、潔いほどにコンパクトな単焦点レンズ。そして、逆光での撮影を好む者にはたまらない「ナノクリスタルコート」が採用された一本です。
ただ一つ、難点を挙げるとすれば、Zシリーズで使うにはマウントアダプター「FTZ」が必須であること。おかげで、せっかくのコンパクトさが少しばかり損なわれてしまうのが玉に瑕(きず)と言えましょう。
気になるサイズ感。純正Zレンズとの比較
数字の上で比較してみましょう。
- AF-S 20mm f/1.8G (Fマウント)
- 全長: 80.5mm / 重量: 355g
- AF-S 20mm f/1.8G + FTZアダプター
- 全長: 116.5mm / 重量: 480g
- NIKKOR Z 20mm f/1.8 S (Zマウント)
- 全長: 108.5mm / 重量: 505g
アダプターを介すると、純正Zレンズより18mmも長くなってしまう。重量では25gのアドバンテージがあるものの、カメラバッグへの収まりを考えると、この長さは正直なところ、少々悩ましい点です。
それでも、私がこのレンズを残す「最大の理由」
純正のZ 20mm f/1.8 Sが発表された時、私は本気で買い替えを検討しました。可搬性を考えれば、当然の判断です。
しかし、購入ボタンを押す寸前で踏みとどまり、まずはネット上のあらゆる作例を探し出し、徹底的に比較検討したのです。「私が求める“太陽”の表情は、この新しいレンズで描けるのか?」と。
そして出した結論は、買い替えの「見送り」でした。
Zレンズの作例は、確かに逆光でも驚くほどクリアで「抜け」が良く、他のSレンズ同様、恐ろしいまでにシャープなのだろうと想像できました。しかし、肝心の太陽の光条が、私の好みとは少し趣が異なっていた。Sレンズに共通する傾向なのか、光条がやや太く、ふわりと広がるように感じられたのです。
もちろん、どのレンズでも木漏れ日のように、太陽が何かの縁に少し隠れれば、先端の鋭い美しい光条は生まれます。ですが、遮るもののないひらけた空に太陽が浮かんでいる状況で、これほどシャープな光条を描き切れるレンズは、そう多くはありません。
(有名なレンズでは、ツァイスのLoxia 21mm F2.8が理想的な光条を描きますが、ご存知の通り価格も一級品です…)
その点、このAF-S NIKKOR 20mm f/1.8G EDは、描写性能と価格の均衡が奇跡的なレベルで保たれた、稀有な一本だと私は確信しています。
百聞は一見にしかず。作例で見る光条の妙
言葉を尽くすより、ご覧いただくのが早いでしょう。拙い写真で恐縮ですが、比較用に4枚を選んでみました。作品としてではなく、あくまで「光条の形」そのものにご注目いただけますと幸いです。
【作例1】 私の愛する一本 (AF-S 20mm f/1.8G)
まずはこのレンズから。光条が際立つよう、背景が暗い岩場の写真です。この、光条の先端が針のように、シュッと天に向かって伸びる様。これこそが私が追い求める描写です。
【作例2】 私の愛する一本 (AF-S 20mm f/1.8G)
こちらも同じレンズで。暑い日が続きますので、涼しげな一枚を。太陽の傍らに緑や赤のゴーストが見えますが、これはレンズ面の清掃や、カメラの角度を微調整することで、さらに追い込めます。今回はあくまで光条比較としてご覧ください。
【作例3】 Zレンズ (Z 14-30mm f/4 S)
ここからはZレンズの写真です。Z 20mmは所有していないため、Z 14-30mm f/4Sで代用します。画角が異なりますので、あくまで参考としてご覧ください。14mmで撮影したため太陽は小さいですが、光条の出方はお分かりいただけるかと。先端が少し広がっているのが特徴です。
【作例4】 Zレンズ (Z 14-30mm f/4 S)
こちらの写真はレンズのホコリをきれいにふき取らないで撮ると盛大にゴーストが出ますよっていう作例です。
じゃなくて、光条の背景が暗いので光条の形がより分かりやすい写真を選びました。
このどっしりと広がる光条も、力強さを感じさせ、一つの表現として大変魅力的だと思います。
ただ、私の好みは、やはり先端が鋭く尖る、シャープな光条。
もちろん、作例4のような状況でも、カメラをほんの数ミリずらし、太陽を木の幹に少しだけ重ねれば、鋭い光条に変化させられます。しかし、何度も申し上げますが、空に太陽だけが在る構図で好みの光条を得るには、レンズの持つ個性、そのものに頼るほかないのです。
だからこそ、このAF-S NIKKOR 20mm f/1.8G EDは、FTZアダプターという少々の不便さと引き換えにしても、私のカメラバッグの一軍から外れることは、この先もないでしょう。
最後に
嬉しいことに、この傑出したレンズが、まだ新品で手に入ります。Fマウントレンズのラインナップが少しずつ整理されている昨今、もし興味を惹かれた方がいらっしゃいましたら、早めの決断をお勧めします。
今回は私が唯一残したFマウントレンズの話でしたが、最後まで売却を悩んだ一本に「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」もあります。小型軽量で取り回しが良く、高画素機で撮影した際の、単焦点ならではの凄みのある解像感には、毎回唸らされたものです。
高性能な一眼レフが実に手頃になった今、これからカメラを始める若い方はもちろん、私のような世代で再びカメラを手に取る方にとっても、優秀なレンズ群が揃うFマウントシステムは、素晴らしい選択肢になるのではないでしょうか。
以上、ブログ200回記念、私の長年の経験からお伝えしたかった、ささやかな情報でした。
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